三菱自動車工業の株価の見通し【日産傘下入りで投資のチャンスか?】

燃費データ不正問題で業績見通しが悪化し、日産自動車(以下日産)傘下入りを発表した三菱自動車工業(東証1部・証券コード7211、以下三菱自)が投資家の注目を集めています。

エアバック事故でリコール多発のタカタ、排ガス不正問題のフォルクスワーゲン、三菱自に続いて同様の不正を発表したスズキなど、自動車関連会社を巡るスキャンダルが相次いでいます。

そこで今回は日産傘下入りで注目度が高い、三菱自の今後の業績と株価の見通しを詳しく分析します。

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(出典:ロイター)

会社概要

三菱自は1970年4月に設立され、自動車業界第7位。筆頭株主は三菱重工で、第2位株主が三菱商事。その他三菱系企業や団体が上位株主に名を連ねる、純然たる三菱グループ企業です(2016年3月期)。代表車種は「ミラージュ」と「パジェロ」。特にパジェロは、パリ・ダカールラリーで優勝多数を誇るなど、性能の高さが評価されています。

また、人気Jリーグチーム「浦和レッズ」の運営会社を持つのは、広告効果を考えると魅力といえます。

半面、レッズのイメージとは裏腹に、2000年と2004年にリコール隠し問題を起こすなど、隠ぺい体質で知られる企業でもあります。

不正問題再発で自力の信用回復を断念、日産傘下へ

2016年4月20日、自動車業界に衝撃が走りました。三菱自と日産の合弁会社が開発した軽自動車の燃費試験のデータについて、三菱自が国土交通省に虚偽の報告をしていたことが発覚。

該当車種は三菱自の「ekワゴン」「ekスペース」と日産の「デイズ」「デイズルークス」で、4車種の合計販売台数は60万台以上に上る模様です。

発覚のきっかけは、協業先である日産が上記4車種の実際の燃費を測定したところ、数字が食い違ったことによるものです。この燃費データ不正について高市早苗総務相は、「エコカー減税の追加納税分は三菱自に負担してもらう」と表明しており、今後三菱自は該当するユーザーに差額分を補償することになります。

ようやく取り戻した信用が再び失墜する事態に、三菱自の相川哲郎社長も「会社の存続に関わるほどの大きな問題」と述べ、長年の隠ぺい体質もあることから、ついに自力での信用回復を断念し、日産の傘下に入り再建を目指すことになりました。

日産の三菱自への出資額は2,370億円で、34%の筆頭株主となります。三菱グループの持ち株比率は20%ほどに低下するため、ほぼ日産の支配下に置かれると考えてよいでしょう。

ただ、三菱自のブランドは残る見通しで、日産側は三菱自の自主経営は尊重するとしています。今後はプラットフォーム(車体の基盤)の共有化や、電気自動車の共同開発などのシナジー効果の発現を目指すことになります。

足元業績は特別損失計上も黒字は確保

●2016年3月期業績データ 単位百万円。( )内は前期比

・売上高 2,267,849(104.0%)
・営業利益 138,377(101.8%)
・経常利益 141,027(93.0%)
・当期純利益 72,575(61.4%)
・1株利益 73.80円(61.4%)
・1株配当金 16円(100%)

2016年3月期の連結業績は、売上高2兆2,678億円、営業利益1,383億円で増収増益。一方で経常利益は1,410億円、当期純利益は191億円の特別損失を計上し725億円と、ともに減益になりました。特別損失は計上したものの、黒字は確保した形です。

特別損失は言うまでもなく燃費不正問題に対する顧客への補償金支払い分を計上するものです。191億円という数字は意外に少ないように見えますが、ガソリン代の差額相当分や、エコカー減税の追加納税分という車本体とは関係の無い補償内容であるためです。

ただし、上記業績は不正問題が発覚する前の期の数字であり、今2017年3月期は大幅に業績が悪化する見通しです。三菱自は2017年3月期の業績見通しについては、補償金問題の先行きが不透明として公表を見送っています。

純資産豊富で財務体質は安定も、今後は悪化へ

●2016年3月期財務データ 単位百万円。
・総資産 1,433,725
・純資産 685,337
・1株純資産 682.45円
・自己資本利益率 10.92%
・自己資本比率 46.81%

今後業績の悪化は避けられない三菱自。投資に当たって心配なのは、業績が回復するまで持ちこたえることができるかどうかでしょう。財務データを分析してみましょう。

総資産1兆4,337億円のうち、純資産は6,853億円で、自己資本比率46.81%と財務は安定しています。最大手のトヨタ自動車(以下トヨタ)の自己資本比率が35.31%ですので、かなり優秀な数字と評価できます。

これから支払いが生じる巨額の補償金を考えると、6,000億円を超える自己資本は強みです。これに日産が出資する2,370億円が加わりますので、その意味では財務的な不安はそれほど深刻なものとはいえないでしょう。

ROE(自己資本利益率)は10.92%で、トヨタの13.79%と比較してもそれほど遜色ありません。過去のリコール隠し問題の影響も薄れ、高収益体質に変わってきていただけに、今回の不正問題で再び信頼を失墜させたことが悔やまれます。

PBR(1株純資産)は682.45円で、割安の基準とされる1倍を割って0.83倍(2016年6月8日終値換算)。財務的な側面からは割安な状態になっています。

ただし、燃費データ不正の対象車が60万台以上と多いことから、どの程度の支払いになるのか、補償金問題の金額が見通せないのが不安な点で、今後財務体質は悪化していく見込みです。会社側は、ユーザーが該当車種を中古車として売却する場合の価値下落分を補償する方針を表明していますが、仮に補償額を20万円とした場合は1,200万円以上の支払いが必要になり、純資産の2割ほどを食いつぶすことになります。

純資産の大きさから直ちに破綻に至るような事態は考えにくいものの、問題が長期化すれば株価への影響は避けられません。

【株価見通し】日産傘下入りで今後の業績と株価はどうなる?

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▲三菱自動車工業(7211)チャート(出典:SBI証券)

最後に、三菱自株価の今後の見通しを見てみます。三菱自の年初来高値は1月4日の1,043円、同安値は4月27日の412円です。明らかに不祥事発覚前と株価が一変しています。しかし、何といっても日産を見事に立て直したカルロス・ゴーン氏のグループで再建できるのは魅力です。

懸念されている巨額補償問題の影響ですが、日産傘下に入ったことにより、少なくとも破綻に至る危険は少なくなったといえるでしょう。

とはいえ、足元2016年5月の社名別販売実績では「ekワゴン」「ekスペース」の2車種が生産・販売停止していることもあり、大幅な減少となっています。同じく不正が発覚したスズキの軽自動車も販売減となっており、やはり不祥事の影響は大きいようです。

ただ、三菱自は海外売り上げの比率が極めて高い企業のため、東南アジアを中心に海外でどの程度不正問題の影響が出るかによって今期の業績も変わっていきそうです。

東南アジアでは三菱自は日産を上回る売り上げを誇り、日産も三菱自を取り込むことによって同地区の販売基盤を強化したいという狙いがあるようです。

一時ストップ安も交え412円まで下落した株価は、日産の傘下入りを好感して2016年6月8日現在では564円まで回復しています。2016年3月期業績の1株利益73.8円からするとPER(株価収益率)7.6倍と割安ですが、2017年3月期は無配転落が確実な情勢で、NISA(少額投資非課税制度)で買うには不向き。資産株としての魅力はなくなります。

今後株価が再び500円を割り込む場面があれば買って、V字回復の流れができた時点で売却というスタンスで臨むのが無難な銘柄といえます。


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